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☆朝夕の娯楽★天声人語&素粒子。聞か36★

79 :文責・名無しさん:04/12/22 06:56:37 ID:kvsxWwJ2
■《天声人語》 12月22日付

 日の光が部屋に深く入り込むようになった。冬至の昨日は、光が狭い部屋を通り抜け、いつもは
仄暗(ほのぐら)い廊下の奥を照らし出した。〈冬至の日しみじみ親し膝に来る 富安風生〉

 外に出ると、冬至の日が、弱いなりにも輝いていた。立ち止まり振り返る。足元から背丈の3倍
くらいの影が、歩道の敷石に伸びている。黒い形が、本人の年齢や国籍を消し去ってたたずむ。
仏系ドイツ人、シャミッソーの『影をなくした男』(岩波文庫)を思い出した。

 自分の影を売り渡して大金持ちになった男の物語だ。影の代わりに、いくらでも金貨の出てくる
金袋を手にしたが、影のない男に世間は冷たかった。悩み、苦しみながら生きてゆく様が面白くも
切ない。影の存在感が強まる冬至の頃には、さぞ困ったことだろう。

 午後に再び街に出ると、太陽は鉛色の雲に隠れていた。誰にも影が無いが、皆平気で仕事に買
い物にと駆け回っている。時に木枯らしのような風が立つ。太いイチョウの根元では、金色の葉が
渦を巻いている。

 〈声高に冬至の山を出できたり〉。作者は今月亡くなった鈴木六林男さんだ。太平洋戦争中、中
国やフィリピンを転戦した。〈遺品あり岩波文庫「阿部一族」〉のような、戦場での人間の姿を鋭く詠
んだ。戦前は、無季俳句の拠点「京大俳句」に投句した。そして〈水枕ガバリと寒い海がある〉の西
東三鬼に師事する。

 冬至の日は、5時前には落ちた。六林男選の『西東三鬼集』(朝日文庫)を開く。今時分を思わせ
る一句があった。〈朝日さす焚火を育て影を育て〉


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